クリニックのブランディング、という言葉には少し身構えます。ロゴを新しくして、内装を白木にして、写真を柔らかい光で撮る。そういう話に聞こえるからです。
そうではありません。患者さんが受診を決めるまでに、何を不安に思い、何を確かめようとするか。そこに答えを用意することが、クリニックにとってのブランディングだと考えています。順番を書きます。
患者さんは、まず不安を減らしたい
飲食店を選ぶときと、クリニックを選ぶときでは、頭の働き方が違います。
飲食店なら「美味しそう」で決まります。ですがクリニックは、「行っても大丈夫か」を確かめてから決めます。期待で選ぶのではなく、不安を消して選ぶ。ここが出発点です。
具体的には、こういうことを考えています。
- この症状で行っていいのか。大げさだと思われないか
- どんな先生か。話を聞いてもらえるか
- 待たされないか。どのくらいかかるか
- いくらかかるか。保険は効くのか
- 子どもを連れて行けるか。駐車場はあるか
デザインが解決できるのは、この中のごく一部です。残りは、情報が載っているかどうかで決まります。
まず整えるべき順番
費用のかからない順、かつ効果の大きい順に並べます。
① Googleマップ …… 診療時間・休診日・電話・地図・駐車場
② 院長の紹介 …… 顔写真・経歴・診療にあたっての考え
③ 症状からの入口 …… この症状のときはこちら、という案内
④ 受診の流れ …… 初診の持ち物・所要時間・費用の目安
ロゴや内装写真は、この後です。先に来ることはありません。
① Googleマップが、実質的な玄関です
「◯◯市 内科」と検索したとき、最初に出るのは地図です。ホームページより先に見られます。ここが埋まっていないと、その先には進みません。
とくに、次の3つは必ず確認してください。
- 診療時間と休診日。午前と午後で分かれている場合、正しく設定されていますか。祝日の扱いは書かれていますか
- 臨時休診の告知。学会や研修で休む日を、その都度反映できていますか。ここが違っていると、いちばん強い不満につながります
- 駐車場の有無。意外に見られています。台数まで書いてあると親切です
すべて無料でできます。ホームページの前に、まずここです。
② 院長の紹介は、いちばん読まれます
クリニックのサイトで、実際によく見られるページはどこか。トップページを除けば、ほぼ確実に院長の紹介です。
患者さんは、設備ではなく人を見ています。とくに初めての方は、「どういう人に診てもらうのか」を先に知りたがります。
載せるべきものは3つです。
顔写真
正面から、はっきり写っているもの。白衣で腕を組んだ写真より、少し笑っている写真のほうが安心されます。スタッフの方の写真も、可能な範囲であるとよいです。受付で最初に会うのはその方だからです。
経歴
出身大学、勤務した病院、専門分野、所属学会。短くて構いませんが、省略しないでください。ここは「確かめる材料」なので、多いほうが安心されます。
診療にあたっての考え
いちばん差がつくのはここです。理念のような抽象的な文章ではなく、実際にどう診るかを具体的に書いてください。
たとえば——
「説明に時間をかけます。そのぶんお待たせすることがあります」
「必要のない薬は出しません」
「当院で対応が難しい場合は、早めに紹介状をお書きします」
これらは、合わない方を遠ざける文章でもあります。それでいいのです。合う方に来ていただくほうが、双方にとって良い結果になります。
③ 症状から入れるようにする
患者さんは、診療科目の名前で探していません。「せき」「肌がかゆい」「健康診断で引っかかった」といった、自分の状態で探しています。
ですから、「内科・小児科・アレルギー科」と科目を並べるだけでは足りません。症状の言葉から入れる入口を作ってください。「こんなときはご相談ください」として、実際に多い症状を並べるだけでも変わります。
これは検索にも効きます。専門用語ではなく、患者さんが使う言葉で書かれているページのほうが、探している人に届きます。
④ 受診の流れと、お金のこと
ここが書かれているクリニックは、多くありません。だから差がつきます。
- 初診で持っていくもの(保険証、お薬手帳、紹介状、健診結果)
- 受付から会計までの、だいたいの所要時間
- 予約が必要か、不要か。当日でも診てもらえるか
- 自費診療がある場合、その費用
- クレジットカードや電子マネーが使えるか
費用の話は、書きにくいと感じられるかもしれません。ですが、書かないほうが不安を残します。保険診療で金額を出しにくい場合も、「3割負担の方で、おおよそ◯◯円程度です」と幅で書けば十分です。
口コミへの向き合い方
クリニック特有の難しさがあるので、触れておきます。
Googleの口コミには、待ち時間や受付の対応についての厳しい書き込みが付きます。ときには、事実と違うものも付きます。そして、返信には守秘義務の壁があります。「その方は来院されていません」「そのような処置はしていません」と書くこと自体が、情報の開示になりかねません。
ですから、返信は次の形が安全です。
返信で、してはいけないこと
個別の診療内容に触れないでください。来院の有無、症状、処置の内容。これらに言及した時点で、守秘義務の問題が生じます。相手が事実と違うことを書いていても同じです。
書けるのは、一般論としての改善の姿勢だけです。「お待たせして申し訳ありません。予約枠の見直しを進めています」——この程度にとどめるのが安全です。反論したくなる気持ちは当然ですが、そこは我慢のしどころです。
それよりも、良い体験をされた方が書きやすい状態を作るほうが効きます。会計時に一言お願いする、待合にカードを置く。強制にならない範囲で。数が増えれば、個別の書き込みの影響は自然と薄まります。
デザインの話は、最後にします
ここまで整ったうえで、ようやく見た目の話になります。そして、そのときも派手にする必要はありません。
クリニックのサイトで大事なのは、文字が読みやすいことです。患者さんの年齢層を考えれば、当然の話です。細い書体、薄いグレーの文字、動く要素。これらは全部、読みにくさになります。
色も、診療科によって考え方が変わります。小児科なら明るくてよいですし、内科や整形外科なら落ち着いた色のほうが安心されます。おしゃれかどうかではなく、来る方に合っているかどうかです。
まとめると
クリニックのブランディングとは、「ここなら大丈夫そうだ」と思ってもらうまでの道筋を整えることだと考えています。ロゴや内装は、その道筋の最後にある仕上げです。
そして最初の一歩は、無料でできます。Googleマップの診療時間を確認する。院長の顔写真を載せる。それだけでも、確実に変わります。
いまの状態を、見てみましょうか。
クリニックの名前を教えていただければ、患者さんの目線でGoogleマップと検索結果を確認し、
不足していそうな箇所をお伝えします。制作のご依頼でなくて構いません。