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集客と経営2026.08

同じ名物の店が並ぶ地域で、
流行る店と流行らない店

同じものを出し、値段も似ていて、味も大きく違わない。
それでも差がつきます。何が分かれ目になっているのか。

同じ名物を出す店が、通りに何軒も並んでいる。うなぎ、かに、鮎、そば、海鮮丼。日本中どこにでもある景色です。

そういう地域を歩いていると、はっきり分かることがあります。同じものを出していて、値段も似ていて、味も大きく違わない。それでも、行列ができる店と、そうでない店に分かれます。

何が違うのか。長く見てきて、思うところを書きます。味の話ではありません。味が同程度だという前提で、そのうえで何が分かれ目になっているか、という話です。

お客様は、実は「選べない」

まず、お客様の立場に立ってみます。

初めてその土地に来て、名物を食べようとする。通りに10軒並んでいる。どれも美味しそうで、どれも同じに見える。この状態では、選ぶための材料がありません。

そして、材料がないとき、人は次のどれかで決めます。

どれも、味とは関係のない理由です。そして、この4つのうち3つは、行列がさらに行列を呼ぶ構造になっています。だから、いちど差がつくと、その差は広がり続けます。

分かれ目1:選ぶ理由を、渡しているか

流行っている店は、たいてい「なぜここなのか」を一言で言えます。

そしてそれは、必ずしも「いちばん美味しい」ではありません。

「創業から継ぎ足しているタレ」
「その日の朝に揚がったものだけ」
「炭で焼くのは、この通りでうちだけ」
「先代から、注文が入ってから捌いています」

どれも、比べられる形になっています。「美味しい」は比べられませんが、「炭で焼いている」は比べられます。お客様は、比べられるものでしか選べません。

逆に、伸び悩んでいる店の説明は、たいてい「素材にこだわり、真心を込めて」です。悪いことは何も書いていません。ただ、隣の店とまったく同じことを書いています。同じことを書いた時点で、選ぶ材料にはなりません。

大事なのは、優れていることではありません。違いが分かることです。

分かれ目2:一番手を狙っているか、二番手で満足しているか

これは厳しい話ですが、書きます。

同じ名物の地域では、たいてい「ここが一番」とされる店があります。そして、その店に入れなかった人が、二番手以下に流れます。この構造に乗っていると、売上は立ちますが、店の名前は残りません。

「あそこが混んでいたから、この店にした」——このお客様は、次に来たときも、まず一番手に並びます。名前を覚えていないからです。

ここを抜けるには、一番手と同じ土俵で勝とうとしないことです。

「うちは一番手ではない」と認めたうえで、別の一番を取る。この判断ができた店が、抜けていきます。

分かれ目3:来る前に、決まっているか

ここが、いまいちばん差がついている部分です。

昔は、現地に着いてから店を選んでいました。だから立地と外観が効きました。いまは違います。多くの方が、来る前に決めています。

宿の予約と一緒に検索する。前日の夜に調べる。車の中で助手席の人が探す。その段階で決まった店に、まっすぐ向かいます。通りを歩いて比べる、ということ自体が減りました。

ですから、通りでの立地が悪くても、検索で見つかれば十分に戦えます。逆に、一等地にあっても、来る前の段階で候補に入らなければ、通り過ぎられます。

来る前に見られているもの

Googleマップ …… 営業時間・定休日・写真・口コミ・駐車場

写真 …… 料理そのもの、店内の雰囲気、席の様子

値段 …… だいたいいくらで食べられるのか

予約できるか …… 電話しないと分からない、は不利になりました

この4つが揃っていない店は、味とは無関係に、候補から外れています。そして、外れたことは店には見えません。

分かれ目4:写真が、料理を裏切っていないか

これは本当によく見ます。

実物は素晴らしいのに、Googleマップに載っている写真が、暗い店内で撮った不鮮明なものだけ。これだけで、相当な数を取りこぼしています。

お客様は写真で判断します。そして、比べます。隣の店の写真が明るくて美味しそうなら、そちらが選ばれます。味は、来てもらってからでないと伝わりません。写真は、来てもらうための道具です。

プロに頼まなくても、いまのスマートフォンで十分に撮れます。窓際の明るい席で、真上からと斜め45度から。これだけで見違えます。

分かれ目5:二度目を作る仕掛けがあるか

観光地の店は、一度きりのお客様が多くなります。だから「二度目は無理だ」と考えがちですが、そうでもありません。

とくに最後は効きます。宿は、お客様に「夕食はどこがいいですか」と必ず聞かれます。そこで名前が出るかどうかは、通りでの立地よりよほど大きい差になります。

結局、味は関係ないのか

もちろん、関係します。ここまで書いたことは、すべて「一度来てもらうまで」の話です。

味が伴っていなければ、口コミが伸びず、二度目もなく、宿も紹介しません。短期的には人が来ますが、続きません。

逆に言えば、味に自信のある店ほど、ここまでの話が効きます。一度来てもらいさえすれば、あとは料理が仕事をしてくれるからです。ところが実際には、味に自信のある店ほど「いいものを出していれば分かってもらえる」と考えて、来てもらうための部分を放置していることが多いのです。

もったいない、といつも思います。分かってもらうためには、まず来てもらわなければなりません。

今日からできること

費用のかからない順に3つだけ。

まず、この3つ

  1. Googleマップの写真を10枚、明るいものに入れ替える。看板料理、店内、席、外観。無料で、いちばん効きます
  2. 「なぜうちなのか」を一言で書く。「こだわり」「真心」を使わずに。使えないと気づいたら、そこが考えどころです
  3. 近隣の宿に、一度あいさつに行く。紹介してもらえるかは、顔を知っているかで決まります

1と3は、今日からできます。2は少し時間がかかりますが、いちばん大事な部分です。

「なぜうちなのか」、一緒に探しましょうか。

お店の名前を教えていただければ、周辺の同業とどう見え方が違うかを確認してお伝えします。
制作のご依頼でなくて構いません。話しているうちに、ご自身で見つかることもあります。

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