「今のリース、あと2年残ってますよね。うちに切り替えれば、月々が3,000円安くなります」
この一言で契約してしまった——という話を、小規模の事業主の方から何度も伺っています。複合機、電話機、サーバー、パソコン、監視カメラ。品目はさまざまですが、起きていることはほとんど同じです。
先に、いちばん大事なことを書きます。これらの多くは、違法ではありません。法律に基づいた、有効な契約です。だから警察も動きませんし、消費者センターに駆け込んでも「事業者間の契約ですので」と言われます。違法ではないからこそ、タチが悪いのです。
なぜ、事業者は守られないのか
ここを知らない方が非常に多いので、最初に書きます。
訪問販売で何かを買わされたとき、消費者にはクーリング・オフがあります。8日以内なら無条件で解除できる、あの制度です。
ところが、事業のために結んだ契約は、原則としてこの対象外です。特定商取引法が守っているのは消費者であって、事業者ではありません。「事業者同士は、対等な知識を持ったプロ同士の取引だから」という考え方に基づいています。
ここが、いちばんの落とし穴です
個人商店でも、ご夫婦だけの飲食店でも、屋号があって事業として契約すれば「事業者」です。相手はそれを分かっています。だから、ご自宅の玄関ではなく、お店の入口から入ってくるのです。
翌日「やっぱりやめます」と電話しても、「事業者様ですのでクーリング・オフの対象外です」と返ってきます。これは、残念ながら正しい説明です。
リース契約は、三者で成り立っています
もうひとつ、構造を知らないと理解できないことがあります。リースは、二者間の売買ではありません。
販売店(訪問してきた会社)が機器を用意し、
リース会社がそれを買い取って、
お店に貸す。
お店が毎月払う相手は、販売店ではなくリース会社です。
ここから、2つのことが導かれます。
ひとつ。訪問してきた販売店がどうなろうと、リース料の支払いは続きます。「あの営業は倒産した」「担当者と連絡がつかない」——それでも、リース会社への支払い義務は残ります。関係のない会社だからです。
ふたつ。リース契約は、原則として中途解約できません。これは業者が意地悪をしているのではなく、リースという仕組みそのものがそういう設計です。リース会社は機器の代金を先に全額払っているので、途中でやめられると回収できません。ですから解約するには、残りの期間分をまとめて支払うことになります。
「月々が安くなります」の正体
ここからが本題です。冒頭の「月々3,000円安くなります」は、多くの場合、嘘ではありません。本当に安くなります。ただし、月々だけが。
残っている支払いを、新しい契約に載せ替えている
いま使っている機器のリースが、あと2年残っているとします。総額でいえば、まだ何十万円か残っています。この残りを新しいリース契約に上乗せして、期間を7年に引き延ばす。これが「組み替え」「巻き直し」と呼ばれるやり方です。
いま:月20,000円 × 残り24回 = 残り 480,000円
提案:新しい機器の代金 + 上の480,000円 を合算し、
84回(7年)に割り直す
→ 月額は 17,000円 に下がる。
→ ただし総支払額は 1,428,000円 になる。
月々は確かに3,000円下がりました。そして総額は、はるかに増えました。しかも、新しい機器を1台手に入れただけで、期間は2年から7年に延びています。
この説明は、契約の場ではまず行われません。語られるのは月額だけです。そして、月額だけを比べれば、その提案は本当にお得に見えます。
これを繰り返すと、抜けられなくなります
7年は長いので、3年目にまた別の営業が来ます。同じことを言います。「今より月々が安くなります」。また残債を載せて、また7年に延ばす。
こうして、終わりのないリースが出来上がります。実際に、10年以上ずっと何かのリース料を払い続けていて、しかも当初の機器はとっくに使っていない、というお店を見たことがあります。
見分け方は、ひとつだけです。「いまの契約の残りは、いくら新しい契約に乗っていますか。金額で教えてください」と聞いてください。
ここで言葉を濁されたら、その提案は月額のマジックです。
もうひとつの問題は、設備が過剰なこと
金額の仕組みと並んで多いのが、そのお店には明らかに大きすぎる設備を入れられているケースです。
- 従業員5人の事務所に、大企業向けの高速複合機
- Webサイトも社内システムも無いのに、業務用サーバー一式
- 電話機が20台。実際に使っているのは3台
- すでに光回線があるのに、別の回線をもう1本
- 使い方の分からない業務システムが、月額に含まれている
過剰な設備は、リース料を大きくします。そして、大きなリース料は販売店の利益になります。「せっかく入れるなら余裕を持ったほうがいい」「これから事業が伸びたときに困りますよ」——この言い方で、必要の2倍3倍のものが入ります。
説明されている内容自体は、間違っていないことが多いのも厄介な点です。技術用語も正しく使われています。正しい説明を、必要のない相手にしている。それがこの商法の本質です。
その場で聞ける、5つの質問
専門知識は要りません。この5つを聞いて、答えを紙に書いてもらってください。
契約書にサインする前に
- 月額いくらで、何回払いですか。掛け算した総額はいくらですか。——電卓を出して、その場で計算してください。これを嫌がる相手なら、それが答えです
- いまの契約の残りは、いくらこの新契約に乗っていますか。——金額で答えられなければ、乗っています
- リース会社はどこですか。御社とは別の会社ですね。——支払先を最初に確認します
- 途中でやめたら、いくら請求されますか。——「残りを一括で」と言われたら、それがこの契約の正体です
- この契約書のほかに、署名する書類は何通ありますか。——リース契約書、保守契約書、売買契約書。別々になっていることがよくあります
そして、いちばん確実な対処法を書きます。その場でサインしないことです。
「今日中に決めていただければこの条件で」「キャンペーンが今月までで」。これは、持ち帰らせないための言葉です。本当に良い条件なら、来週でも来月でも成立します。期限を切ってくる時点で、比較されると困る内容だということです。
すでに契約してしまった場合
正直に申し上げます。署名して物件を受け取ったあとの解除は、簡単ではありません。期待を持たせるようなことは書けません。
そのうえで、確認していただきたいことがあります。
- 契約書を全部そろえて、総額を計算する。まず、いま自分が何にいくら払う契約になっているのかを正確に把握してください。ここが分かっていないと、誰に相談しても話が進みません
- 明らかな虚偽説明があったかを思い出す。「NTTの指示で交換が必要」「補助金が出る」「解約はいつでもできる」。事実と違う説明で契約させられた場合、契約の取消しを主張できる余地はあります。ただしこれは法律の領域です
- 署名した日付と、物件が届いた日付を確認する。物件を受け取る前であれば、話し合いの余地が広がる場合があります
相談先について
弊社は法律の専門家ではありません。ここから先は、専門家にご相談ください。事業者間の契約であっても、地域の商工会議所や商工会の経営相談窓口、弁護士会の法律相談は利用できます。リース契約については、公益社団法人リース事業協会にも相談窓口があります。
支払いを一方的に止めるのは、おすすめしません。信用情報に傷がつき、そのあとの選択肢が減ります。まず相談してからにしてください。
ホームページやサーバーも、同じ形で売られています
ここは弊社の本業に近い話なので、書いておきます。
ホームページ制作にも、まったく同じ構造の契約があります。「月々12,800円・60回」。総額にすると768,000円で、途中でやめると残りを一括請求される。作られたサイトの権利も、多くの場合お店のものになりません。詳しくは別の記事に書きました。
弊社は月額制でサイトを作っていますが、契約期間の縛りを設けていません。やめたいときにやめられます。同じ「月額」でも、リースとは別のものです。ここを混同されると困るので、はっきり書いておきます。
もし、いまお持ちの契約書を見て「これはリースなのか、月額サービスなのか分からない」と思われたら、写真を送っていただければ読みます。費用はいただきませんし、そのあと営業のご連絡もしません。問題がなければ「問題ありません」とお伝えして終わります。