「リースはやめたほうがいい」という話は、制作会社が書くと、どうしても同業他社を悪く言って自社に誘導する話に見えてしまいます。私たちもそれは本意ではありません。
そこでこの記事では、感想や営業トークを排して、誰でも確認できる数字と公的な事実だけを整理します。相場との比較、裁判所の判決、業界団体の規則、自治体の注意喚起。判断はそのうえで、読まれた方ご自身がしてください。
事実1:相場と総額の開き
中小企業向けのホームページ制作費の一般的な相場は、内容にもよりますが30万〜100万円程度とされています。一方、リース契約では月額3〜5万円を5年(60回)支払う形が多く、総額を計算すると次のようになります。
月額3〜5万円 × 60回。相場30〜100万円の制作物に対して、2〜3倍の総額になる計算です。月額には、リース会社の金利・手数料といった金融費用が上乗せされています。
ここで誤解してほしくないことがあります。制作費が100万円を超えること自体は、おかしなことではありません。取材や撮影を行い、ページ数や機能が増え、工程が積み重なれば、当社の制作でも100万円を超えることは普通にあります。作業が増えれば対価も増える。それだけのことです。
問題は金額の高さではなく、その金額が何の対価なのかです。工程に見合った制作費として100万円を払うのと、50万円相当の制作物に金融費用が上乗せされて総額200万円を払うのとでは、同じ「高い買い物」でも意味がまったく違います。前者は制作物に、後者は制作物ではないところにお金が流れています。そして後者では、その差額の負担はすべてお客様の側にあります。
見分け方は単純です。見積の内訳が出てくるか。内訳の項目と実際の工程が対応しているか。総額が契約前に示されるか。この3つに答えられない提案は、金額の根拠を説明できない提案です。
事実2:つじつまが合わない契約であること
ホームページのリース契約は、個々の条件が厳しいというより、全体としてつじつまが合っていないことに特徴があります。並べてみます。
- リース契約の対象にできるのは有形の物件です。ホームページは無形なので、本来リースできません。そこで契約書上は「管理ソフト」や「タブレット端末」が物件になります。
- ところが営業の場で説明されるのは、物件であるはずのソフトの話ではなく、ホームページの集客効果です。契約書と説明が一致していません。
- リースの建前では、期間が終われば物件はリース会社に返すものです。では作ったホームページやドメイン、書いた文章の権利は誰のものか。契約書に明確な答えがないことが少なくありません。
- リース物件の保守・修繕はリース会社の責任ではなく利用者負担、というのがリースの原則です。「サポート込み」と説明されていても、リース会社はサポートに責任を負っていません。
- 途中でやめれば残額を一括で払い、続けても5年後にはサイトが古くなっている。どちらを選んでも負担するのはお客様です。
ひとつひとつは「そういう契約だから」で済まされがちです。しかし全部を並べると、矛盾のしわ寄せが一方的にお客様側に来る設計になっていることが分かります。この構造を知らないまま、月額の安さと集客効果の説明だけで契約してしまう方が、実際に後を絶ちません。
事実3:自治体が注意喚起の資料を出している
これは業界内の噂話ではなく、行政も文書で注意を促している問題です。たとえば東京都台東区は「その『リース契約』、本当に必要ですか?」という資料を公開し、この種の契約では契約金額の大半を占めるのはソフトウェアであって、ホームページ制作ではないと指摘しています。
また各地の消費生活センターや商工会議所の相談窓口にも、ホームページのリース契約に関する相談が寄せられ続けています。それだけ定型的なトラブルとして認知されている、ということです。
事実4:リース会社の責任を認めた判決がある
「契約してしまったら、もう争えない」と思われがちですが、そうとも限りません。参考になる裁判例があります。
大阪高裁 令和3年2月16日判決
- 販売店(制作側)が不当な勧誘を行って契約させた事案です。
- 従来は「販売店に問題があっても、リース会社は関係ない」という主張が通りがちでした。
- この判決は、リース会社が勧誘の実態を把握できたのに放置した場合、リース料の請求は制限されると判断し、実際に請求を一部制限しました。
- その際に参照されたのが、公益社団法人リース事業協会の自主規制規則です。リース会社には、販売店の不当な勧誘から顧客を保護するための施策を講じることが期待されている、とされました。
つまり、リース会社の側にも顧客を守る責任があることが、裁判所の判断として示されています。勧誘の経緯に問題があった場合、この判決と自主規制規則は交渉や相談の際の参照点になります。
事実5:事業者契約とクーリング・オフ
ここは正確に書きます。クーリング・オフは消費者を守る制度なので、事業のために結んだ契約は原則として対象外です。「会社の契約だから8日以内なら解除できる」とは、残念ながらなりません。
ただし例外の余地はあります。個人事業の方などで、契約の実態が事業とほとんど関係なかったと判断され、適用が認められた例もあります。原則対象外・例外あり、というのが正確なところです。
だからこそ、契約前がすべてです
事業者の契約は、消費者ほど制度に守られていません。署名した契約書の内容が、ほぼそのまま結論になります。契約書の相手方・リース物件の欄・総額・解約条項。この4点を署名の前に確認することが、事後のどんな交渉よりも確実です。
困ったときに、書類を持って行く先
すでに契約していて不安がある場合は、リース契約書・申込書・提案資料・やり取りの記録を揃えたうえで、次の窓口に相談できます。
- 消費生活センター(消費者ホットライン 188)——事業者契約は対応が限られる場合もありますが、適切な窓口を案内してもらえます。
- 商工会議所・自治体の経営相談窓口——事業者向けの無料相談で、契約トラブルの相談実績があります。
- 弁護士・行政書士——勧誘の経緯に問題があった場合は、事実4の判決と自主規制規則が論点になり得ます。
感情的な交渉より、書面を揃えて専門窓口へ。これがいちばん確実で、いちばん早い道です。
この記事は、判断材料です
ここに書いたのは、相場・判決・公的資料という確認できる事実だけです。契約を検討中の方は、この事実と目の前の契約書を照らし合わせてください。当社でなくて構いません。署名の前に、利害関係のない誰かに契約書を見せることをおすすめします。
契約書について相談するリース契約の仕組みそのものと、契約前に聞くべき3つの質問については、第1回に書きました。
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